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複式顕微鏡の自作

 レーウェンフックの顕微鏡のページで、ガラス玉顕微鏡作りを紹介しましたが、あれはレンズ1枚の単式顕微鏡と呼ばれるものでした。現在私たちが顕微鏡と聞いてイメージするのは、対物レンズと接眼レンズを持った複式顕微鏡です。なんとか複式顕微鏡の自作ができないものかと考えました。(公開:2005/04/10、更新:2005/04/19)

自作顕微鏡(2作目)の紹介(2005/04/19)

顕微鏡に使えるレンズを探す

 太陽の光を集めたりして、虫眼鏡とルーペの焦点距離を比べるとよくわかりますが、倍率の高いルーペの方が焦点距離が短いです。ルーペが顕微鏡の接眼レンズの代わりに使えるように接眼レンズの焦点距離も短いです(逆に接眼レンズも種類によってはルーペ代わりに使えます)。接眼レンズには、「5×」とか「10×」とか倍率の表記しかありませんが「250mm÷倍率」で焦点距離が計算できるようです。つまり、10倍の接眼レンズの焦点距離は、250÷10=25mmとなります。
 さとう博士の研究室ミクロの世界(その2)では、顕微鏡に天体望遠鏡用の接眼レンズを流用する話が紹介されています。

 とにかく顕微鏡を自作するにあたっては、まず、焦点距離の短いレンズを調達するところから考えないといけません。

<2005/04/13追記>
 液晶・有機光電子材料実験講座の顕微鏡のページで紹介されている数式からは、 「対物レンズの焦点距離≒鏡筒長÷対物レンズの拡大倍率」という関係があるらしいです。つまり、鏡筒長160mmで用いた時に、拡大率10倍の対物レンズの焦点距離は、おおよそ16mmということですね。やはり焦点距離の短いレンズを探さないといけません。小型デジカメのレンズなどは焦点距離が短かそうですね・・・。

 最近、カメラ屋さんのワゴンセールで使えなくなったコンパクトカメラが、1台100円で投げ売りされていました。実は、Fan Science GalleryA ONE-DOLLARCOMPOUND MICROSCOPEで、写るんです(レンズ付きフィルム)のレンズを用いた顕微鏡工作の紹介があって、コンパクトカメラのレンズも使えそうだなと思っていたところでした。さっそく使えそうな物を選んで買いました。
 バラして得たレンズが上の写真です。メインのレンズだけでなく、測光窓のレンズもプラスチック製ではあるものの焦点距離がとても短くて、対物レンズに流用できそうです。

実物合わせでの設計

 レンズは調達できました。ところが、カメラをバラして得たレンズの正確な焦点距離はわかりませんし、光学設計の知識はまったくないも同然ですので、どうやって顕微鏡各部のサイズを決めたら良いのか、さっぱりわかりません・・・。あまり思案しても仕方なさそうなので「案ずるより生むがやすし」で「実物合わせ」してみることにしました。
 簡単な光学台を作って、接眼レンズと対物レンズとプレパラートを移動できるようにし、接眼レンズ側から覗きつつ間隔を変えて、ピントの合う位置を記録しました。接眼レンズには焦点距離およそ35mmのレンズを、対物レンズには焦点距離およそ10mmと35mmのレンズを使ってみました。結果は次の表の通り。

 上の結果から、焦点距離およそ10mmのレンズを使った時の対物レンズとプレパラートの距離がほぼ一定になることがわかりました。35mmのレンズの時は、接眼レンズと対物レンズの距離を離した方が、対物レンズとプレパラートの距離が短くなる結果です。より高倍率の対物レンズとして使えそうなのは、焦点距離およそ10mmのレンズですので、まずはこれを使って作ってみようと思います。
 接眼レンズと対物レンズの距離を離した方が見える範囲が狭くなります(つまり倍率が上がっている)が、光軸を合わせるのが難しくなります。鏡筒部全体の長さで16〜20cm程度が妥当なところかなと思われました。結局、普通の光学顕微鏡のサイズと変わらないところに落ち着きました。
 さて、次はどんな素材をつかって、どんな形にデザインするかを検討します。
 例によって、できるだけ加工をせずに組み立てられ、入手が容易で、かつ安価な素材を選ぼうと思います。

デザインと材料の入手&組み立て

 工作の強い見方、ホームセンターでの素材集めです。今回は鏡筒上下式のデザインで作ろうと思います。
 鏡筒部は円筒形のパイプを使用します。最初は塩ビ管を考えていましたが、水道用塩ビ管の部品スイセンバルブ13の外径と 組立パイプシステム「スペーシア」 のパイプの内径がぴったりだったので、こちらに変更しました。都合のいいことに、スペーシアのパーツでPJ-703が鏡筒支持&粗動部に、PJ-505が接眼レンズ用に使えそうです。対物レンズ用には塩ビ管の部品スイセンソケット13を組みあわせました。
 鏡基は、ワンバイフィーの木材で作ります。ネジ類や接着材等は手持ちのもので使えました。反射鏡はとりあえず余っていたものを流用しています(そのうち適当なものがあったら変更予定)。
 100円ショップで鏡筒支持部の摩擦増加用に、書道で使う下敷き用?の黒いフェルト、鏡筒内部の反射防止用に黒い画用紙、髪留め用のクリップも購入。全部買っても1,000円程度です(^^)。

・左:主な素材。塩ビ管部品と組立パイプシステム「スペーシア」の部品がメイン。鏡筒用のパイプは、長さ10cm。
・中:完成した自作顕微鏡とビクセンの学習用顕微鏡SE-1000とを並べてみました。予想より大きめの体格になりました。
・右:接眼レンズ部分のアップ。レンズの固定には、フィルムケースのフタを利用。鏡筒部をステージ中央に寄せるため、角材で支持パーツを浮かせました。

・左から4つ目まで:いろんな角度から撮影。だいたいのデザインが分かっていただけるでしょう。簡単な木工ですね。ステージにプレパラートを固定するクリップは、髪留め用のピンを加工してネジ止めしてます。
・右から2つ目:対物レンズ側から。対物レンズは、厚紙に穴をあけて、レンズを木工用ボンドで貼り付けただけ・・・(そのうちちゃんとした固定方法を考えます)。とりあえずこれで使えます。スイセンソケット13を買ってくれば、交換レンズも増やせますし。鏡筒支持部には、フェルトを間に挟んで摩擦を調整し、粗動装置を兼ねています。
・右端:対物レンズを回すと、プレパラートとの距離が調節できますので、微妙なピント調整が可能です。しかし、ネジをゆるめすぎるとガタが出ますので、できるだけ粗動でピントを合わせてから用いた方が良いですね。

左:鏡筒部。鏡筒内部には、黒い画用紙を丸めて入れ、反射が少なくなるようにしました。接眼レンズや対物レンズは取り外し可能にしたので、適当なレンズが調達できれば、増やしていけそうです。
右:グミのりん毛のプレパラートを見た様子。正確な倍率は不明ですが、他の顕微鏡と比べると約100倍の観察倍率が得られたみたいです。対物レンズが1枚のプラスチックレンズなので色収差がありますが、学習用顕微鏡レベルの見え方ですので、十分使えますよ。

ぜひ、皆さんも顕微鏡を自作してみてください。自作の顕微鏡でのミクロの探検も、面白いですよ。(2005/04/10)

その後の改良(その1)

さとう博士の研究室ミクロの世界(その9)絞りの試作を参考にステージの下にスライド式「絞り板」を作ってみました。材料は黒いプラスチック下敷きを切って使いました。直径1mmから6mmくらいの穴をあけて、光量を調整できるようにしました。円盤型よりも作成が楽です。でも光軸を合わせるのは結構難しかった・・・。(2005/04/16)

その後の改良(その2)

反射鏡を付け替えました。小さな鏡(100円ショップで購入)にアルミ板棒を加工して脚を付けました。チョウネジとボルトで台に固定。これで完全自作の顕微鏡になりました。対物レンズの取り付けには、厚紙を使っていましたが、黒いプラ板に両面テープで固定してからボンドで水栓バルブに接着するように改良しました。(2005/04/24)

<参考になるサイト>

Webを「顕微鏡 作る」などのキーワードで検索しても、日本語のサイトにはあまり先例が見つかりませんでした。天体望遠鏡なんかは自作されている方が多数おられるのと比べると対照的ですね。いくつか見つけたサイトを下記にあげておきます。

●Fan Science Gallery
A ONE-DOLLAR COMPOUND MICROSCOPEが参考になります。これは値段が示されているので、キット商品なのでしょうね。こういう顕微鏡工作キットが日本でも販売されるといいなと思います。

●虫眼鏡を使った手作り顕微鏡
宮城県教育研修センターのページにありました。子供たちは、こういう科学工作、おもしろがるでしょうね。

●デジカメ+ベローズ(蛇腹)
すばらしい観察記録を紹介されているGen-yu's Filesの中の1ページ。顕微鏡のレンズを利用した写真撮影システムを自作されていますが、これは顕微鏡そのものですね。私もベローズが欲しくなりました。

●液晶・有機光電子材料実験講座
 顕微鏡のページには、対物レンズの焦点距離や倍率などについての詳しい解説があり、参考になります。


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