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カワモヅクの1種の観察例

2006年4月23日。奈良県天理市の山間部、大和川の源流域にて、 橿原市昆虫館友の会のイベントがありました。春の虫観察会。ここまで上流に来ると、大和川もきれいなせせらぎになります。ほんの50cmほどの幅の流れでは、ヒメドロムシなどの虫を捕っている方もおられました。そんな小川の中を 近くを見れる双眼鏡Papilioで散策していたら、カワモヅクの仲間を見つけました。実物は何度か見せてもらったことがあったのですが、自分で発見したのは初めてでした。ペンタックスのPapilioは、なかなか役に立ちました。


カワモヅクの仲間は、冬から春にかけて小川の礫上や木片などに付着して生育する紅藻類です。海産のテングサやフノリなんかに近いんだそうです。でも見つけたものは、見た感じ緑色っぽいですね。アオカワモヅクという種類もあるんだとか。もしかしたら、それに近いのかもしれないなぁ。
写真左:採取したカワモヅクの全形。小さなものです。肉眼でも数珠状に連なったような節のある藻だとわかります。モヅクやジュンサイみたいにヌルヌルしてて、食用にもできるそうです。少し食べたけど、砂が付いていてジャリジャリしました・・・。少量なので味もよくわからかったです。
中:実体顕微鏡で拡大。各節から樹枝状の細かい分岐が球状に広がっているのですね。軸の部分は、紅藻っぽい色に見えます。
右:さらに生物顕微鏡で拡大。細かい分枝は、細胞が一列に並んで伸びています。



追記
2006年5月21日、橿原市大谷町。橿原市昆虫館友の会のイベントで、またもやカワモヅクが見つかりました。田んぼに水を引き込む幅30cmくらいの小川です。草刈りされた後でしたが、水中の茎にカワモヅクが着いていました。
写真左:見つかったカワモヅク。こんな用水路でも見つかりました。上流に小さな湧水池があって、水はきれいだし、水温も低いみたいです。
右:持ち帰って、半月以上冷蔵庫に入れっぱなしだった標本を撮影・・・。撮影中に臭いを嗅ぐと、海苔の佃煮に似た匂いが・・・。
 大阪自然史博物館のメーリングリストで教えてもらった話では、カワモヅクは結構分類の難しいグループで生殖器がないと同定できないらしいです。基本的には低温で清水の所であればどこでもいるのだそうですが、見つけようとしないと、たぶん気づきもしないと思います・・・。
 標本は、基本は「さく葉標本」で押さずに紙の上において風乾するそうです。やはり「海藻押し葉」の要領ですかね。



写真左:今回の標本には、各節に嚢果(のうか)と呼ばれる球状の構造ができていました。「日本隱花植物圖鑑」三省堂(昭和14年)に載っている「カハモヅク」の写真によく似ていますが、やはり同定は難しい・・・。
中:嚢果は、軸から枝が伸びて、その先端で球状に枝分かれしています。今回のものは、分岐部(嚢果部ではない)の細胞が細長く、幅5〜8μm、長さ10〜30μmです。
右:嚢果のアップ。いまいち鮮明に写らないのですが・・・。この嚢果で、直径は約120μmです。



<参考になるサイト>

▼兵庫県版レッドデータブック
カワモヅクと言ってもいろいろな種類があるようです。

▼環境省のレッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)
にもいろいろ掲載されています。

▼水槽のカワモヅク(Batrachospermum sp.)

▼海藻研究日誌〜8万点目の海藻を求めて〜
すごいページです。顕微鏡画のススメはすばらしい。デジカメ撮影でお手軽に済ましている身としては・・・。海藻押し葉についても解説があります。

▼真正紅藻 Florideophycidae

▼市川自然博物館だより第60号,レッドデータブック掲載種紹介


公開:2006/04/23 /更新:2006/06/18

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